メトロポリタン・オペラ 7/19~7/25

昨年の春から続いた無料動画配信もついに最後の週を迎えました。とかく不安な気持ちになりがちであったコロナ禍でしたが、この無料配信のおかげで大変有意義で豊かな毎日を過ごすことができました。多くの素晴らしい作品、歌手、指揮者、舞台美術、演出に巡り合うことができ、新たな発見もたくさんあり、オペラ熱が再燃した日々でもありました。


今週は最後の週ということで、視聴者の投票によるプログラムで名作が並びました。


7/19 フィガロの結婚

数あるフィガロの中から選ばれたのは、ブリン・ターフェルのフィガロ、ルネ・フレミングの伯爵夫人、チェチーリア・バルトリのスザンナによる公演。ブリン・ターフェルは大変高貴なフィガロで、ちょっと立派過ぎかなと思わないでもないですが、聴きごたえ十分。フレミングの伯爵夫人も上品で素敵です。バルトリのスザンナは想像を超える可愛らしさ。特別バージョンでいくつか歌曲を披露してくれます。「恋とはどんなものかしら」「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」「楽しい日々はどこへ」「手紙の二重唱」など、有名どころのアリアや重唱も盛りだくさん。


7/20 カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師

1978年と少し古い公演ですが、ドミンゴ、トロヤノス、ストラータス、ミルンズといった豪華な顔ぶれで期待度マックスです。マスカーニとレオン・カヴァレロ作曲のこの二つのオペラは短いこともあって通常、二つ並べて上演されます。どちらも激しい嫉妬が引き起こす悲劇がテーマとなっており、紅蓮の炎が燃えさかる情熱的な歌唱を堪能できるものと思います。カヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲は大変美しい曲で合唱曲に編曲されたものもよく歌われています。以前にアリエッタでも「Ave Maria」という題名になったものを歌いましたね。


7/21 真珠採り

ビゼーのオペラというと「カルメン」が有名ですが、この「真珠採り」ももっと知られて良い素晴らしい作品です。古代のセイロンが舞台で、ひとりの巫女を愛してしまった二人の男の葛藤と友情を描いたもの。巫女を演じるダムラウは声の美しさはもちろんのこと、巫女の装束が大変似合っていて妖艶な雰囲気を醸し出しています。マシュー・ポレンザーニとマリウシュ・クヴィエチェンが歌う二重唱「神殿の奥深く」は類まれな美しさで、男声のデュエットなのに愛の二重唱のよう。タンゴにもなって知られている「耳に残るは君の歌声」も魅力的。海の底を表現した舞台装置も壮大で見どころのひとつです。


7/22 ホフマン物語

フランスのオッフェンバックの作品。詩人のホフマンが酒場で酔いつぶれて、かつての敗れた恋について語り出すところから物語は進んでいき、かつて愛した三人の女性が次々に登場します。人形のオランピア、歌を愛する病弱なアントニア、高級娼婦のジュリエッタ。その物語にはミューズの化身の親友ニクラウスと、さまざまなイカサマ師に姿を変えた悪魔が常に寄りそったりささやいたり。ニクラウスはこの役を得意とするケイト・リンジー。悪魔はトーマス・ハンプソン。このオペラで最も知られている曲は第三幕でニクラウスとジュリエッタによって歌われる二重唱「ホフマンの舟歌」。これ以降、さまざまな場面でこの旋律がバックに流れてきます。第二幕で歌われるオランピアの超絶技巧アリアも聴きどころ。第一幕でホフマンが歌う「クラインザックの歌」もリズミカルで印象的な歌です。


7/23 連帯の娘

ドニゼッティ節満載の楽しいオペラ。上流階級の令嬢だったマリーがひょんなことから連隊で育てられ、男の子のようにのびのびと暮らしていたところ、偶然、叔母と再会してお屋敷に連れ戻され、令嬢としてのふるまいを叩き込まれて、あまりの世界の違いに人生を嘆いているところに戦車に乗った連隊の兵士たちがマリーを救い出しに来てめでたしめでたしとなる物語。マリーと恋仲になっているトニオを歌うのがフアン・ディエゴ・フローレス。9回連続のハイCを軽々とこなしてしまうのは驚異的。マリーを歌うのはナタリー・デセイ。


7/24 トロヴァトーレ

ヴェルディの円熟期の傑作。兄弟であることを知らずに、一人の女性レオノーラをめぐって対立するルナ伯爵とジプシーに育てられたマンリーコ。政治的な対立も絡んで二人の間には壮絶な憎しみが芽生え、悲劇へと突き進んでいきます。レオノーラを歌うのは歌姫アンナ・ネトレプコ。ルナ伯爵役は、病床から復帰したホヴォロストフスキー。登場の際には、復帰を心待ちにしていたファンの拍手が鳴りやまず、前奏が中断されるというハプニングがありました。マンリーコを歌うのはヨンフン・リー。ジプシーはこの役を25年も歌ってきたというドローラ・ザジック。有名なジプシーの合唱の場面はメトロポリタンの合唱指揮者が最も好きな場面のひとつだと話していました。


7/25 仮面舞踏会

こちらもヴェルディの傑作。17世紀のスウェーデンの物語ですが、20世紀初頭に舞台を移した斬新な演出です。グスタフ3世の部下レナートは、妻のアメリアとグスタフ3世の仲を疑い、仮面舞踏会の雑踏を利用した暗殺を企てますが、親友でもあったグスタフ3世はアメリアとレナートの幸せを願っていたことを死の間際に告白しますが、時すでに遅く...という悲劇ですが、深刻な場面の後に躍動感あふれる音楽になったり、たっぷり聴かせるアリアの後に速いせりふが入ったりと、変化に富んでいて聴く者を飽きさせません。グスタフ3世を歌うマルチェロ・アルヴァレス、レナートのホヴォロストフスキー、アメリアのソンドラ・ラドヴァノフスキーなど、素晴らしい歌手が集結。オスカー役のキャスリーン・キムの華麗な声にも注目。


7/21の「真珠採り」と7/25の「仮面舞踏会」は私も投票した作品。


昨年から、拙いながらもいろいろな作品をご紹介してきましたが、少しでもオペラに興味を持っていただけたらこんなにうれしいことはありません。これまでお読みいただいて本当にありがとうございました。


Direttrice

真珠採り

袖ケ浦混声合唱団

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