市原グリークラブ

創立30周年記念コンサートで歌う『Abschied (別れ)』

  


 市原グリークラブ・コールレルヒ創立30周年記念コンサートで歌うドイツ歌曲『Abschied (別れ)』がある。ドイツ南部シュヴァーベン地方に伝わる民謡で、メロディはドイツ歌曲『ローレライ』で知られるジルヒャーが採譜したものである。


 この曲を聴くと私には小学校の音楽の授業が思い出されてならない。この曲は小学5年生の音楽の教科書に載っていた曲で、曲名はたしか「かけっこ」だった。


 ピアノが得意でない若い男の先生が、伴奏をするために汗を垂らしながら必死に練習し、45分授業で残された15分間、ところどころテンポの狂う伴奏合わせて、必死に先生と歌ったことが思い出される。「たらたったら、たったらたったらた、学校の周りをたた、たったたったた。先生もシャツ一つで先頭に、、、、」 この曲がドイツではAbschied 「別れ」だから驚きだ。それにしてもこの軽快なメロディは「かけっこ」のほうが相応しいようにも思える。だから「別れ」だと聞くと、どのような別れを想像していいか迷ってしまう。

 原曲のタイトルは『Muß i denn (Muss i den)』または『Abschied』。前者のタイトルをあえてカタカナ表記にすると「ムシデン」となるが、この「ムシデン」が日本における同曲の題名として定着している。


 原語と日本語訳を紹介すると


1.Muss i denn, muss i denn

  zum Städtele hinaus, Städtele hinaus,

  Und du, mein Schatz, bleibst hier ?

  Wenn i komm’, wenn i komm’,

  wenn i wiedrum komm’,

  Kehr’ i ein, mein Schatz, bei dir.

  Kann i glei net allweil bei dir sein,

  Han i doch mein Freud’ an dir !

  Wenn i komm’, wenn i komm’,

  wenn i wiedrum komm’,

  Kehr’ i ein, mein Schatz, bei dir.


  僕は町を離れねばならない

  ここに残る愛しい君

  僕が戻ってきたら

  恋人よ 君に会いに行くよ

  君のそばにはいられないけど

  僕の幸せは君次第なんだ

  僕が戻ってきたら

  恋人よ 君に会いに行くよ


2.Wie du weinst, wie du weinst,

  Dass i wandere muss, wandere muss,

  Wie wenn d’ Lieb’ jetzt wär’ vorbei !

  Sind au drauss, sind au drauss

  Der Mädele viel, Mädele viel,

  Lieber Schatz, i bleib dir treu.

  Denk du net, wenn i ’ne Andre seh’,

  No sei mein’ Lieb’ vorbei;

  Sind au drauss, sind au drauss

  Der Mädele viel, Mädele viel,

  Lieber Schatz, i bleib dir treu.


  旅に出る僕に 君は涙する

  まるで愛が失われるかのように

  行く先には娘も多いけど

  愛しい君よ 僕は君ひとすじ

  他の娘に会っても

  君への愛は変わらないから

  行く先には娘も多いけど

  愛しい君よ 僕は君ひとすじ


3.Über’s Jahr, über’s Jahr,

  Wenn me Träubele schneid’t, Träubele schneid’t,

  Stell’ i hier mi wiedrum ein;

  Bin i dann, bin i dann

  Dein Schätzele noch, Schätzele noch,

  So soll die Hochzeit sein.

  Über’s Jahr, do ist mein’ Zeit vorbei,

  Da g’hör’ i mein und dein;

  Bin i dann, bin i dann

  Dein Schätzele noch, Schätzele noch,

  So soll die Hochzeit sein.


  時が過ぎたら

  ブドウを摘んで

  また戻ってくるから

  そのとき僕が まだ君の愛しい人なら

  結婚式を挙げよう

  時が過ぎて修行が終われば

  僕は君のもの

  そのとき僕が まだ君の愛しい人なら

  結婚式を挙げよう。




 歌詞の内容は、職人修行の旅に出る若者と、しばしの別れを告げられ涙する恋人のやりとりを、若者の視点から描写した恋の歌となっている。「旅から帰って来た時、まだ君が僕を好きなら結婚式を挙げよう」とのプロポーズで恋の歌は締めくくられる。

 この別れはしばしの別れで修行から帰ってきたら結婚する2人のほのぼのとした幸せを歌っている。だから軽快にかつ明らかに歌っていいことがわかる。

 日本ではドイツ民謡としての印象が強い『ムシデン』だが、本国ドイツでは、ドイツ軍の軍歌・行進曲として同曲が演奏される機会が多い。原曲では職人修行が別れの理由だったが、軍歌としてはもちろん戦地への出兵が念頭に置かれるのだろう。

 詩の意味や曲の背景を知ったうえで演奏することの重要性をこの曲は教えてくれた。この曲は愛の歌としてしばしの別れを明るく歌った方がいいと思う。

 このほのぼのとした愛をうたう民謡をなぜドイツは軍歌に取り入れたのだろう。若い戦士たちを明るく戦地に送り出してあげようとしたのだろうか、ただ単にリズムがいいからだけではない気がする。

                                   バス:桐田

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